集落を歩いていると Oさんが肥えを切っていた。
昔は牛の餌にもしたけれど 今は牛を飼っている家はないので畑の肥やし専用。
昔 祖父が草をあてがい 兄が切っていて「痛いっ!」と言ったと思ったら 祖父の指が一本 第一関節から切断してしまった。
その時の兄はまだ幼く どうしていいのか分からず ただ呆然としていた。
すると祖父は「おい。これをナツメの木の元へ放って来い」と言って手渡したそうだ。
兄は 逆らう事も出来ず祖父の言う通りに 庭の先にあるナツメの木の根元にその指を捨ててきたのだ。
その話をOさんにすると「おお 昔はそんがなのはようあったんぞ。Sのじいさんや四本みな飛んだんぞ。ほなきに金槌振り上げても しっかり持てんきに さいさい向こうへ向いて飛んびょった(笑)」
今なら大事件で テレビのニュースになりそうな事が 昔は日常の中で起こっていた。
すぐに立ち去るのは気が引けるので 手伝いをしようと思ったが そんな事を聞かされた後では どうも気が進まない。
加害者にも被害者にもなりたくないからね。
そこでパンパンになったビニール袋を軽トラックに乗せてからOさんと分かれた。